湊かなえ「人間標本を読んで」

「告白」を初めて読んだでからずっと、湊かなえさんの作品の虜だ。

登場人物の心情をえぐりにえぐりって表現し、それは共感を超えて読んでいる途中から感情が爆発してしまうこともある。

例えるなら、表面上は仲良くしている二者。ところが彼らには他者には分からない巧妙なイザコザが隠れていることが多々ある。第三者に訴えても、「あの人はいい人だよ!」と、伝わらず。返って自分が悪人になる。この複雑でもどかしい気持ち、誰も表現してくれる人はいなかった。

自分の経験したことのある、心の深いところにある感情表現に共感を抱く。湊かなえ作品にはそんな凄さがある。

そして、イヤミスの女王と呼ばれるだけあって、物語最後の最後で180度急展開させる。今回の作品もそうだった。その、"急展開前"の展開にさえ度肝を抜かれ夢中になって読み進めていたのに、まさに最後の最後でまたもや裏切られてしまった。え!そっち?!と。読者を最後まで飽きさせない。

 

今回読んだ「人間標本」

思いやりと思いやりが絡まり合った。そんな作品だった。